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「ベーシックインカムこそが、基本的人権の実現だ(2)」 [ベーシックインカム]

下の2つの記事は、「ベーシックインカム・実現を探る会 
BIメールニュースNo.077  2010.12.11発行」からの転載です。

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【1】ベーシックインカムこそが、基本的人権の実現だ(2)
      BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長 野末 雅寛
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 前回のコラムでは、基本的人権に立脚する政治的立場に立つことが、ベーシック
インカム(以下BI)を実施することに直結すると述べた。ラディカルすぎる。そう
思う人も多いだろう。

 なぜラディカルなBIを導入するのか、穏当に福祉や雇用を充実させれば生存権を
保証することができるではないかいう批判がある。しかし私は、福祉や雇用では基
本的人権を十分に保証することができず、BIこそが基本的人権の具現化だと考える。

 まず福祉について検証する。例えば、生活保護は、確かに当人の実情に応じた給
付を柔軟に適用できる利点はあるし、これが最後のセーフティネットになっている。
しかし、全く平等ではなく、厳しい条件付きで、しかも現場職員の恣意的な判断で
適用が決定されるという大きな欠点がある。この点で、基本的人権の中枢を占める
平等権に大いに抵触しているし、職員の厳しい取調べが受給者の尊厳を損ねており、
良心の自由をも犯している。

 次に、福祉や教育の現物給付だが、これだけでは自由権は保証されない。現金の
利点は、選択肢が広がるということである。現物給付では用途が限られてしまい、
生存権は保証されるが、国が認可したミニマムなライフスタイル以上には進むこと
ができない。
 
 最後に雇用だが、自由権がないに等しい。休日は労務から解放されるが、業務外
活動がバレないように副業に勤しむ人や、社会的な活動にコミットする人は圧倒的
多数である。会社の理解がないと、言論の自由や職業選択の自由など、自由権を享
受することができない。

 また、労働組合が全ての企業になく、ある企業のほうが少数であろう。つまり、
生存権は、景気変動や雇用者の胸先三寸で左右される人のほうが多く、すべての国
民に平等に保証されているわけではない。失業保険ですら、非正規労働者には適用
されないケースが多々あり、雇用による生存権の保証もまた風前の灯火である。

 これら従来型の福祉や雇用ではクリア出来ていなかった陥穽を、BIが埋めること
ができるのである。なぜか。受給するのに屈辱を受けないし、ライフスタイルの可
能性が広がるし、労働者に自由を与えるし、何よりも全ての人に平等に所得が保証
されているからだ。これこそが、基本的人権の精神を最も正確に反映した社会制度
ではないだろうか。

 ここまで概論でさらっと触れた。次回以降は、自由権・社会権・平等権などの各
論を深く掘り下げてみたい。


<野末雅寛 プロフィール>
BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長
http://www.mag2.com/m/0000292484.html
http://bijp.net/mailnews/
http://twitter.com/nozuem

富山の片田舎で生活する環境で世界恐慌に直面して、自殺者増加を防ぐと同時
に、画期的な起業・イノベーションをも促すBIの必然性を痛感しない日はない。



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【2】BIニュース 
テレビ朝日『池上彰の学べるニュース』でベーシックインカムが取り上げられます
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ベーシックインカムがついに地上波のゴールデンタイムで、しかも今をときめく池
上彰氏に紹介されます。
http://www.tv-asahi.co.jp/manaberu/

12月15日(水)20時よりテレビ朝日系で放映されますが、その内の1コーナーにすぎ
ませんので、どれだけ詳しく取り上げてもらえるのかも分かりませんし、ひょっと
すると否定的に扱われるかもしれません。

そして、テレビ朝日のホームページに掲げられていた下記の案内も、私たちの基本
的人権を実現するのではなく、行政コスト削減ありきのようで気がかりです。

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最近、「ベーシックインカム」という言葉を聞いたことはありませんか?これはす
べての人に決まった金額を定期的に払います!という制度。今、年金や雇用保険な
ど、制度が複雑となりすぎて、管理するために莫大な金額がかかっています。それ
ならば、全国民、一律にお金を払うことにすれば簡単でコストもかからないはず・
・・!という発想なのですが・・・。果たしてこんな政策が実現する可能性はある
のか、解説します。
------------------

しかし、これほど露出度と視聴率の高い舞台でベーシックインカムが取り上げられ
るのは、認知度が高まる良い機会であることは間違いありませんので、ぜひ多くの
方にベーシックインカムを知ってもらいたいと思います。


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「ベーシックインカムこそが、基本的人権の実現だ(1)」 [ベーシックインカム]

下は、「ベーシックインカム・実現を探る会 
BIメールニュースNo.075  2010.11.26発行」からの転載です。

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【1】ベーシックインカムこそが、基本的人権の実現だ(1)
      BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長 野末 雅寛
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 先週のコラムで白崎氏が取り上げていたが、ニッセイ基礎研究所の遅澤秀一氏は
「人的投資としてのベーシック・インカムの可能性について」のなかで、誰もがも
つ自然権に立脚するBI理念は思想的あるいは政治的立場を異なる人々を納得させ
ることは難しいだろう、と述べている。
http://www.nli-research.co.jp/report/research_paper/2010/rp10_004.html

 しかし、自然権を法定化した基本的人権に立脚しない政治的立場を悠長にキープ
できる人などいるのだろうか。

 基本的人権は、主に自由権・社会権・平等権などが代表的だ。これらに立脚する
ことなしに、はたして日常生活を送ることが可能だろうか。自由権がなければ、ビ
ジネスマンが職業を自由に選ぶこともできないし、企業活動もままならない。そし
て、言論の自由がなくなり、不当逮捕が横行し、拷問を受けても抵抗してはならな
いことになる。

 社会権がなければ、貧しいというだけで医療や基本的な教育を受けることも出来
なくなるし、教科書も全て有償になるだろう。そして、何らかの事情で健康で文化
的な最低限度の生活を営むことができなくなっても、国家はその生存を蹴散らして
姥捨て山に葬ってもいいことになるのだ。今でも生活保護の捕捉率が20%程でセ
ーフティネットが貧弱なのに、それすらもなくなってしまうのだ。

 基本的人権に立脚しない政治的立場に立つということは、弱い立場の人の人権を
切り捨てることであり、社会は、仕事が出来る人だけが生き残って、仕事ができな
い人はザックザック切り捨てるジェノサイドを行うべきだと高らかに主張しなけれ
ばならないことになる。遅澤氏はそこまでの覚悟があるのだろうか。

 私はそれとは対照的に、徹頭徹尾基本的人権に立脚する政治的立場に立つ。その
立場とは、自由権と社会権を法の下で平等に、すべての人に字義通り適用すること
である。

 自由権と社会権をすべての人に平等に適用するということは、ベーシックインカ
ムを実現することに他ならない。なぜならば、ベーシックインカムは、すべての人
に平等に、健康で文化的な最低限度の生活を保証し、個々人の自由な活動をサポー
トすることも可能な現金を月数万円給付するからだ。

 いきなり狐につままれたような飛躍を感じた人も多いだろう。次回、基本的人権
に立脚する政治的立場に立つことが、ベーシックインカムを実施することに直結す
る点を詳しく説明することとする。


<野末雅寛 プロフィール>
BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長
http://www.mag2.com/m/0000292484.html
http://bijp.net/mailnews/
http://twitter.com/nozuem

富山の片田舎で生活する環境で世界恐慌に直面して、自殺者増加を防ぐと同時
に、画期的な起業・イノベーションをも促すBIの必然性を痛感しない日はない。


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『メンテナンス経済に向けて (七)』 [ベーシックインカム]

下は、「ベーシックインカム・実現を探る会 
BIメールニュースNo.072 2010.11.06発行」からの転載です。

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【1】『メンテナンス経済に向けて (七)』      関 曠野
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 今の世界恐慌の根本原因は銀行マネーとその破綻にあることを多くの人々が理解
し始めている。そうした社会の底流の変化がもっとも顕著な国は、やはりこの恐慌
の震源地であるアメリカである。アメリカでは公益に奉仕する公立銀行の設立を求
める声が州レベルで高まっており、それを選挙公約に掲げる政治家も出てきた。最
近、公立銀行設立運動を推進するためのpublicbankingというサイトもネット上に
誕生した。この動きが実を結べば無利子の政府通貨の発行が運動の次の目標になる
だろう。
http://publicbanking.wordpress.com/

 だが政府通貨の発行は簡単なことではない。アメリカの通貨改革運動を代表する
エレン・ブラウンやリチャード・クックの「銀行ではなく議会が通貨を発行すれば
問題は万事解決」という議論はおかしい。銀行による通貨の供給には金融業界の私
利の追求という明確な基準がある。それがいずれ恐慌の原因になるとしても、とに
かく発行の基準は明確である。では政府が発行する通貨の使途や使途の優先順位を
決定する基準はどこにあるのか。議会制と政党政治の枠内では政府通貨は政争の具
になり、選挙で勝った勢力がその基盤の強化や拡大のために使う党派マネーになっ
てしまうだろう。党派マネーは銀行マネーに劣らず経済を撹乱し、おそらく悪性の
インフレを惹き起こすだろう。ゆえに政府通貨という制度は議会制および政党政治
とは両立しない。

 そして政府通貨が信認され流通する根拠は、その使途についての国民の広範でし
っかりした合意である。かってリンカーンやシャハトや高橋是清が政府通貨という
試みに成功しえたのも、南北戦争の戦費調達や恐慌打開のための緊急手段として世
に認識され、社会の合意に問題がなかったからである。このように国民の大多数が
承認し同意する明確な発行基準なしには政府通貨は実現しない。そして国民が政府
通貨の課題は均衡のとれた経済や富の最適な分配にあることを理解できず、経済成
長の神話に呪縛されたままであるなら、政府通貨は破滅の原因になりかねない。

 二十一世紀の現在、政府通貨の発行に明確で健全な基準を与えるもの、それは成
長からメンテナンスへの経済原則の転換である。そこでは価値あるもの、有意義な
ものを真の富として維持保全することへの社会の真摯な関与が、政府通貨の使途と
使途の優先順位を決定するのである。      (続)


<関 曠野 氏 プロフィール>(第一土曜日執筆)
1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て
1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。
著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、
『民族とは何か』(講談社現代新書)など。

2009年3月8日の当会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。
講演録
http://bijp.net/transcript/article/27
質疑応答
http://bijp.net/transcript/article/79


ベーシックインカム・実現を探る会
http://bijp.net/


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「モンゴルでベーシックインカムが支給開始!?」 [ベーシックインカム]

以下の文章は、「ベーシックインカム・実現を探る会 
BIメールニュースNo.071  2010.10.30発行」からの転載です。


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モンゴルでベーシックインカムが支給開始!?
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モンゴルでベーシックインカムが支給されることが以前からささやかれていました
が、ついに支給が開始されたようです。

人間開発手当て金を本日から支給する
http://mongolnews.blog133.fc2.com/blog-entry-60.html

モンゴル国民全員に12万トゥグルクを支給するように以前から決められていたうち、
最初の7万トゥグルクをそれぞれにすでに支給した模様です。残りの5万トゥグルク
を月々に1万トゥグルクずつ支給するように春季国会で決められているようです。

モンゴルの平均月収は17万トゥグルグですから、支給額は平均月収の7割くらいと
なります。
http://kokoro.mn/mongolia-travel-info/4.html
為替レートの額面よりも、平均月収から推計すれば、日本でいうと20~25万円くら
いに相当すると考えることができると思います。1回きりだった1万2千円の定額給
付金のが毎月支給されるようなイメージでしょうか

ただし、新しい住民登録システムに登録することが前提となっており、国民背番号
制度への反発の大きさを踏まえると、日本で同じシステムを導入するとなると、賛
否両論の大きな議論を起こしそうです。

しかし、国家レベルでのベーシックインカムは、州レベルで実現しているアラスカ
州や、導入を検討しているイランを別とすれば、初めての事例となり、社会実験的
な意義を考慮すれば画期的であることは間違いありません。

イランの事例とともに、注目すべき点が増えてきました。


ベーシックインカム・実現を探る会
http://bijp.net/
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【動画】BIこそニッポン再興の切り札だ! [ベーシックインカム]

(動画解説より)
「生活保護の不正受給金額100億円突破!生活保護受給金額が、労働者の賃金から税金や­健康保険料等を引いた手取りの金額を上回るという、理不尽な現実・・・。個人に一生涯­、わけ隔てなく渡せるベーシックインカムこそが私たちの生活不安を解消する。」


http://www.youtube.com/watch?v=1pNA_s5g9DY

ベーシックインカムについて(新党日本)
http://www.nippon-dream.com/?page_id=175
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『春の海をみながら…』 [ベーシックインカム]

「ベーシックインカム・実現を探る会 BIメールニュースno.065」
からの転載です。

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『春の海をみながら…』      白崎朝子
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 同志社大学であったベーシックインカム日本ネットワーク設立集会で発言してから、10日ほどたった4月初旬。私は神奈川の城ヶ島を訪れた。釣糸を垂れる人が数人しかいない春の海は、穏やかな波の音が響いていた。

 しばし海を眺めていたら、2年前人手が足りない認知症グループホームで働いていた時の記憶が蘇ってきた。常勤職員が一人退職し、一人一人の高齢者の気持ちや状態に寄り添うゆとりがなくなりつつある時の記憶だ。

 それでも精神的に不安定になっているAさんを元気づけたくてベランダに椅子を出し、二人で春風にあたった。ほんの40分程だったがAさんは本当に喜んでくれた。フロアに残った高齢者八人は一人しかいない若い職員に任せ、Aさんと春風の気持ち良さを味わった。そういった束の間の時間は、時給いくらとかでは換算できない豊穣な営みだった。私がAさんと共有できた穏やかで柔らかい時間…。その意味のもつ深さ、いとおしさの記憶を春の海を見ながら抱きしめた。

 利用者から月20万円もの利用料を取っているにも関わらず、職員の給与は夜勤を月に7回もするフルタイムでも手取り17万円程しかなく、職員の離職に歯止めがかからない。人生の終焉の時間に寄り添う高齢者介護という仕事は、本来ならば介護労働者にも高齢者との関わりの中から生まれてくる賜物がたくさんある。むろん人と人との関わりだから、綺麗事ばかりではない。それでも、波の音を聴いていると静かに蘇ってくるのは、関わった高齢者たちの笑顔だ。


 BIは人が生まれた瞬間から死ぬ瞬間まで、そのかけがえのない生存に対する保障であるはず…。本来、すべての人がどんな状態であっても、その存在を全面肯定されるというその哲学的な意味において、私は共感し支持してきた。そして、人の魂に寄り添う介護労働は低賃金とか、ダーティワークとか、3Kとか、そういったくくりだけでは語り尽くせない意味をもっている。

 しかし「BIが導入されたら、人が嫌がる3Kの介護労働をやる人間がいなくなるのでは?」という疑念がBI推進派からよく出てくる。私は、その発想じたいが現場を担う介護労働者に対する「暴力」ではないかと思う。自分自身は介護に関係ないといった高みからの発想にしか感じられないのだ。

 介護労働を3Kと貶めることが介護労働者だけでなく、介護を受ける当事者たちに対しても失礼だとは思わないのだろうか?介護を受ける当事者と介護労働者が営む時間の豊かさを、きちんと保障していくためのBIという発想がまるでない。政府が失業対策に介護や農林業をと言うのと同レベルの発想の貧困ではないか。

 私は私なりの想いと言葉で、介護という営み・仕事の豊かさや、その価値をきちんと伝えていかなければならないと思っている。


白崎朝子(介護福祉士・ライター)
『安全な労働と所得保障を求める介護労働者の会』会員・小規模勉強会『カナリアネットワーク』を主宰。著書「介護労働を生きる」(現代書館)他。


ベーシックインカム・実現を探る会
http://bijp.net/

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「ベーシックインカムを通じて社会を作り直すこと」 [ベーシックインカム]

下は、「ベーシックインカム・実現を探る会 BIメールニュースNo.062」
(2010.8.28発行)からの転載です。

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ベーシックインカムを通じて社会を作り直すこと    田村哲樹
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 このエッセイでは、BIを通じて「社会」を作り直すというシナリオを描いてみ
たい。ここで「社会」とは、「国家」と「市場」から区別された空間を指す。こう
書くと当たり前のことのようだ。しかし、この区別はしばしば曖昧になる。

 たとえば、私たちは、「誰もが勤勉に働く社会」を「よい社会」と思いがちであ
る。「勤勉に働く」ことは「市場」の領域では大切なことだ。だが、「勤勉に働く
人」が、地域や家族のことをきちんと考え、そこで日々起こる問題に向き合ってい
るとは限らない。そもそも、長時間勤務の正規雇用者とその日の暮らしもままなら
ない非正規雇用者とにとって、自分の仕事以外の何かに十分な時間を割くことは難
しい。

 あるいは、「社会」に何か問題が起こった時に「国家の責任」が問われることが
ある。確かに「国家」は、「社会」に起こった問題に対応する必要がある。だが、
「国家」が必ずしもあらゆる問題に対応できる能力がないこと、それにもかかわら
ず「国家」に委ねることで却って問題が起こることを、私たちは既によく知ってい
るはずである。

 「社会」には、日々様々な問題が生じる。だが、そのすべてを「市場」や「国家」
で解決できるわけでも、そうすることが好ましいわけでもない。「社会」の問題は
「社会」で解決できるようにするのがよい。そのためには、私たち自身が「日々の
問題解決者」となることが必要である。  

 ここにBIの意義がある。BIによって労働以外から得られる所得によって、労
働の持つ重みは、実体的にも心理的にも減少する。労働以外のことに使える時間が
増えるとともに、そのような時間の大切さを実感できるようになる。その結果、私
たちは、「社会」の様々な場面における「日々の問題解決者」として行動しようと
考えるようになるかもしれない。

 BIの無条件性は、「日々の問題解決者」になることを強制しない。だが、無条
件であるがゆえに、BIは、すべての人々に「日々の問題解決者」となる機会を提
供できる。「日々の問題解決」に携わる人にだけ支払われる給付は、それに携わる
人/携わらない人という社会的分業を招きかねない。その結果、「仕事が忙しいか
ら」「女性(妻)の役割だから」と、「日々の問題解決」に携わらないことが正当
化されてしまうかもしれない。BIは無条件だからこそ、誰もが「怠け者」になら
ない可能性を提供できるのである。


<田村哲樹 氏 プロフィール>
 専門は政治学・政治理論。特に、民主主義理論、福祉国家論、ジェンダーの政治
学に関心。著書に『政治理論とフェミニズムの間』『熟議の理由』など。1970
年生。名古屋大学大学院法学研究科教授。博士(法学)。


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『BI論議に対する懸念~公共通貨によるBIを見据えて』 [ベーシックインカム]

下は、「ベーシックインカム・実現を探る会 BIメールニュースno.060」からの転載です。
ベーシックインカム・実現を探る会:http://bijp.net/

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『BI論議に対する懸念~公共通貨によるBIを見据えて』     岩田 渉
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 BIの導入は、社会構造的に生み出される様々な問題を解決するものとして期待/検討されているが、実のところ税方式によるBI論からは、問題を解決するのではなく、問題そのものに手がつけられることはないということがわかる。傷口を塞ぐこと無く、輸血を続ければ、傷口は消え去るのだと念じているようにも見えるし、傷口が表面に浮かび上がることなく、更に悪化する可能性すら感じられる。また、徴税と再分配によるBIからは、消費という行為の搾取、格差の永続化、持てるものによる持たざるものの支配、全体的な家内奴隷制化といったヴィジョンを見て取る。

 税方式によるBIは、様々な問題を抱えた社会構造を維持することで利を得るものにとっては好条件ですらある。現在、色々な税がBIの財源として考えられているが、主要なものは所得税と消費税といっていいだろう。例えば仮に、ひと月に1人/10万円のBIが所得税/消費税一律50%といった徴税をもって行なわれたとしよ う。しかし生産された富の分配を妨げている、現行の通貨制度が民主化されえないのならば、量的緩和の名の元、配布されたBI10万円の実質的価値を5万、3万、2万と引き下げることは容易である。そしてインフレに応じて給与が即刻引き上げられることがないことからも、BIがそうした条件に応じてすぐさま引き上げられるとは考えにくい。

 しかしそれでもなお、一律50%という税率で徴税はされ続けることとなる。言い換えれば、マネーによる交換によって成り立つ現在の我々の生活/生命は、より直接的に通貨制度/銀行制度に結びつけられることとなり、それはあたかも、生殺与奪の権利をそれらに与えるかのようなものである。(字数の関係上、銀行制度/ 通貨制度問題の詳察は省く。ベーシックインカム・実現を探る会のHPにある関曠野氏の講演録を参照されたし)。

関曠野氏講演録
http://bijp.net/transcript/article/27

 こうして税方式によるBIの問題点を見ていくことでも、前向きな可能性を持ったBIとは、交換媒体/社会インフラとして民主的に発行される公共通貨によるBIであることが理解されるだろう。そして地域主権の構築に組み入れられるならば、その力は存分なく発揮され、同時に過度な中央集権化に対する懸念も払拭される。

 BIの導入を進めるためには、同時に通貨制度/銀行制度の問題を周知する必要がある。通貨制度の民主化、そしてBIの配布は、民主主義社会の再構築のなかに位置づけられなければならず、それは、経済システムの中に社会が埋め込まれている現状から、社会の中に経済を埋め込むという発想の転換が必要とされるということでもある。


岩田渉 音楽家/画家 現在、生活保護受給中。

BI関連翻訳

戦争の諸原因
by C.H.ダグラス
http://wtr000.blogspot.com/2010/03/blog-post.html

C.H.ダグラスの経済学とルドルフ・シュタイナーの経済学の関連について
オーウェン・バーフィールド著
http://wtr000.blogspot.com/2010/05/ch.html

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「不換紙幣がなぜ信用されるのか(3)」 [ベーシックインカム]

下は、「ベーシックインカム・実現を探る会」の
BIメールニュースNo.057(2010.7.24発行)からの転載です。

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【1】不換紙幣がなぜ信用されるのか(3)
     ベーシックインカム・実現を探る会 主任研究員  古山 明男
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 現代のお金は、返済の約束そのものを流通させているようなものであり、銀行貸 出によっていくらでも作り出すことができる。しかし、返済のアテのない貸出が行 われれば、結局は不良債権となって消滅する。

 現実には、いいかげんな貸出がたくさん行われた。その消滅がはじまると、大連 鎖反応が起こり、大銀行すら倒産して恐慌になる。そこで、債務保証をつけたり、 もっと貸出をしたりして、危機を先延ばしする。それで、日本では90年代以来、 アメリカではリーマン・ショック以来、超低金利政策によって、お金がどんどん生 まれるようにしている。

 しかし、市中にお金はいくらでもあるのに、生活者に生活費が回っていないとい う現象が起こっている。生活に困る層が増えているのに、余ったお金は土地、株式 などのバブルを起こしている。企業への資金供給を増やしても、経済は活性化しな い。

 だったら、生活者に直接お金を渡してしまったほうが、経済が活性化するではな いか。それが、経済面から見たときのベーシック・インカムの論理である。

 しかし、財源が問題である。税金でベーシック・インカムの財源をまかなうこと は可能であるが、所得税でも消費税でも40~50%程度の税率が必要になる。い かなる政権もそんな増税を言い出せば保たないであろう。

 そこで、次のような発想が出てくるのである。

 生産者側に対してお金を作ってもいいなら、健全な経済活動に使われるかぎり、 消費者側にもお金を作ってしまっていいではないか。お金を生産側から入れても、 消費側から入れても、ちゃんと経済活動と結びついて循環するならば同じことであ る。

 しかし、毎年100兆円を超すお金が出されて市中に滞留するなら、じきにバブ ルかインフレを起こす。消滅するメカニズムが必要である。現在のお金も、返済ま たは不良債権の発生という形で、ちゃんと消滅メカニズムがついているのである。
 そこで、このベーシック・インカムのお金は、人から人へと渡る中で、時々に保 有している人が返済することにする。時間が経つごとに、そして使うごとに少しず つ返済する。電子マネーを使えば、技術的にさほど難しいことではない。自動的な 返済であるから、結果的に減価マネーになるのである。現在の日銀券と共存させる。

 減価マネーには、多くの利点がある。とくに、ベーシック・インカムと組み合わ せて生活の不安をなくせば、人間の拝金主義を根底から変えるであろう。

 このような案を、「電子式減価マネー」として発表した。
http://bijp.net/transcript/article/98

 問題点をさらに修正し、わかりやすくした案を用意しているところである。通貨 に関する根本的な議論を期待したい。


<古山明男 氏 プロフィール>
古山教育研究所を主宰
http://www.asahi-net.or.jp/~ru2a-frym/
ブログ「変えよう!日本の学校システム」は多くの支持を受けています。
http://educa.cocolog-nifty.com/blog/

2009年7月12日の当会主催の勉強会で「ベーシック・インカムのある社会」を講演。
講演録
http://bijp.net/transcript/article/91
http://bijp.net/transcript/article/98

ベーシックインカム・実現を探る会
http://bijp.net/
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「不換紙幣がなぜ信用されるのか」 [ベーシックインカム]

下は、「ベーシックインカム・実現を探る会の
BIメールニュースNo.055(2010.7.10発行)からの転載です。

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【1】不換紙幣がなぜ信用されるのか(2)
     ベーシックインカム・実現を探る会 主任研究員  古山 明男
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 ベーシック・インカムが、肥大したマネー経済から抜け出す切り札になることを述べたい。

 現在のお金のほとんどは銀行が貸出をするときに新たに生まれたお金である。銀行は、ある上限までなら、持っていないお金を貸してもかまわないのである。信用創造と呼ばれる。

 昔は貴金属を通貨としていたが、現在のお金は、支払ってもらえる約束そのものを人から人へと渡して流通させている。紙幣はそのものとして価値を持つのではなく、信用創造で生まれたお金に、実体経済の裏付けがあるため価値を持つのである。

 しかし、作りやすいお金は、作られすぎて価値を失いやすいものである。この点に関して現在のお金は、作りすぎれば貸し倒れとなって消滅することで価値を保障している。貸し倒れの発生そのものは、消化できない食べ物を吐き出すようなものであって、必要な現象である。

 しかし、現実には「大きすぎて潰せない」が頻発するため、マネーの作りすぎが修正されにくい。大企業が倒産すると、銀行まで潰れてしまうためである。企業が倒産しかけたら、もっと貸せば企業は生き延びる。危なくなったら、貸す。これが続くかぎり、倒産は起こらない。その裏で、見えない不良債権が積み重なる。

 「大きすぎて潰せない」ことは、国にとっても同様である。大企業や大銀行が危なくなると、国や中央銀行から資金を提供したり、不良債権を買い上げたりして生き延びさせる。ほうっておくと恐慌になるから、助けざるをえないのである。しかしそれは、根本治療ではなく、奇跡が起こるのを待つ延命治療なのである。世界中でこれが起きている。

 肥大したマネー経済は、どこかで実体経済の規模に縮小せざるを得ないはずであるが、先延ばしするほどに、そのときのショックは大きくなる。

 もしそこに、ベーシック・インカムがあれば、「大きすぎて潰せない」ことは起こらない。企業が潰れても、人々は生き延びられるからである。不良債権はさっさと処理し、過剰設備もさっさと処理し、効率の悪くなった産業分野(日本の建設業のような)をさっさと縮小し、より社会を豊かにする分野に資金と労働力が移っていけばいいのである。ベーシック・インカムがあれば、労働力の移行のための再教育期間が十分にとれる。

 しかも、ベーシック・インカムがあれば、生活のための消費が確保されるから、経済の縮小をある程度の線で押さえることができるのである。

(この稿続く)


<古山明男 氏 プロフィール>
古山教育研究所を主宰
http://www.asahi-net.or.jp/~ru2a-frym/
ブログ「変えよう!日本の学校システム」は多くの支持を受けています。
http://educa.cocolog-nifty.com/blog/

2009年7月12日の当会主催の勉強会で「ベーシック・インカムのある社会」を講演。
講演録
http://bijp.net/transcript/article/91
http://bijp.net/transcript/article/98

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